利用者の"生の声" 〜一般社団法人F-connect(前編)〜
F-connectは、2014年に小池純輝選手が当時在籍していたクラブのスタッフからお願いされて顔を出した児童養護施設での幼い子供たちとの交流をきっかけに、サッカー・フットボールを通じて何か子ども達に伝えることは出来ないかと考え、【フットボールで繋げる、フットボールが繋げる】をコンセプトにF-connect(フットボールコネクトの略)と名前を付けて2015年に活動を始めた団体です。
F-connectは、2021年に「エフコネファーム」という活動を始めることになりました。これは、「プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子ども達と泥んこになりたい』をテーマに長野県飯綱町の畑に施設の子供たちを招待して、自然の中で学ぶ体験を提供する、という活動です。
今回、「エフコネファーム」を実行するための活動資金を集めるため、スポチュニティでクラウドファンディングを実施。プロジェクトは目標金額の300万円を達成して大成功に終わった。
クラウドファンディング実施に至った経緯、思ったことなど、F-connectの生の声を2回にわたって配信します。
≪初めての試みだったクラウドファンディング≫
スポチュニティ:F-connectとしてクラウドファンディングを実施するのは今回が初めてですか?
沼澤様(以下、敬称略):クラウドファンディングは初めてです。(沼澤)
スポチュニティ:クラウドファンディングを実施した背景、どんなことを期待してはじめたのかを教えてください。クラウドファンディングの目標としては、養護施設にいるお子様たちと自然を体験する機会を作るためにエフコネファームをつくりたい、ということでしょうか?
沼澤:そうですね。元々の背景から話すと、スポチュニティ代表の川戸さんとは3年くらいの付き合いになります。F-connectの活動自体は、クラウドファンディングに向いていると考えていましたが、そもそも選手が自主的に、自分の休日を使って活動しているというのが始まりで、昨年のコロナ禍もそうですが、コンディションやチーム状況により活動できない時期があり、せっかくご支援いただいても自分たちが有効に使えない可能性も大きくあったので、クラウドファンディングを避けてきたところもありました。
おそらく、それなりの金額はクラウドファンディングでご支援いただけるとは思いますが、例えばチームが練習で忙しかったり、選手がケガしちゃったりして活動ができなくなった場合に、みなさんにご協力いただいて集めたお金が使えないこともあると考えると、踏み切る機会がありませんでした。
そんな中でちょうど今回エフコネファームという企画があがりまして、最初はクラウドファンディングに頼るつもりはなかったのですが、少しまとまったお金があることで取り組めることが格段に大きくなるということも考えられたので、川戸さんにご相談させていただき、はじめてクラウドファンディングをやってみようかな、ということになりました。
スポチュニティ:Spportunityをクラウドファンディングでご依頼いただいたのは、そもそも(代表の)川戸とのつながりからでしょうか?
沼澤:そうですね。共通の知人を介して川戸さんとはとても長くお付き合いさせていただいていました。毎年、会うたびに何かあればやりたいですね、とお話しさせていただいていたので、クラウドファンディングをやるのであればSpportunityというのは私の中ではあった。あとは、プロサッカー選手で立ち上げ取り組んでいる団体ですので、スポーツに特化しているという部分。なので、他を選ぶ理由はありませんでした。(沼澤)
≪クラウドファンディングに期待したこと・不安だったこと≫
スポチュニティ:金銭的な部分の目的もあると思うが、そのプロジェクトをやることによって金銭的な支援以外のところで、こういうきっかけが作れれば、という期待はあったのでしょうか?
沼澤:どうしても活動自体が日頃選手を応援してくれている方、小池や梶川をもともとよく知っている方にしか伝わっていなかったところがありました。今回そういう意味では、F-connectの選手が所属しているチーム以外のサポーターの方にも、エフコネファームを通してF-connectを知っていただきました。今までもグッズの販売をしていましたが、今回のクラウドファンディングの支援者の方は、今までにグッズを送ったことのない都道府県が増えているなという印象がありました。
Twitterを見ても、フォローやリツイートしてくださる方の投稿に、F-connectの選手以外のクラブの写真やエンブレムも見かけるようなことも増えたので、そういう意味では、今まで自分たちで広めてきたところ以外の、サッカー界の人に知っていただく機会にはなったと思っています。
スポチュニティ:そこを実感されていて、我々としてもうれしいです。
沼澤:どうしても反応のよさでいってしまうと小池・梶川が所属している東京ヴェルディのサポーターのみなさまや、日頃から二人を応援してくださっている方の反応や熱量が高くそちらに目が行きがちですが、そうではない人たちも多く見受けられたのがうれしかった。
スポチュニティ:逆に、クラウドファンディングのプロジェクトをやると決められた時に、不安や、もともと思っていたイメージとのギャップなどはあったりしましたか?
沼澤:今回Spportunityで実施するという部分で大きく期待したのは、個別のファン以外に、小池が着ているようなウェアにスポンサーを入れるといった、法人の方にも興味を持ってほしいなというのがありました。実際に背中には8社ご支援いただけました。
もともと選手とつながりのある企業ですが、クラウドファンディングが支援する良いきっかけになったのではと考えており、期待していた部分がある程度できたのはすごく良かったと思っています。
沼澤:不安については、300万円という設定の金額が、法人の支援を期待した部分もありますが、私達の想定できるファンの数だと難しいと思っていました。最初は200万円くらいと思っていましたが、Spportunityの担当者とお話しする中で、だいぶ自信を持って準備をご支援くださったので、思い切って300万円という背伸びした設定にしました。Spportunityの皆さんが企画を考えて下さったおかげで、300万という目標が達成できたと思っています。
スポチュニティ:設定金額もSpportunityといろいろ話をする中で見定めていった部分なのでしょうか?
沼澤:そうですね。おそらく200万円に設定していたら、目標を達成することは出来ても300万円までは届かなかったかもしれないし、200万円というゴールを達成したことに、私達が喜んで終わっていたかもしれない。
クラウドファンディングをやったことなかったので、今回はSpportunityのプロの意見を聞かせていただいて、それにファンが応えてくれたと思っています。
小池様(以下、敬称略):これまでは、F-connectの活動の認知を拡大するっていうところにすごく課題があって、まずF-connectという活動の前に僕らがいて、まず僕らを知ってくれた人が、その先に小池って選手はそういう活動をしているんだ、という認知のされ方でした。今回クラウドファンディングを通じて、先にF-connectの活動が前に来て、その後に僕らがやっているという感じの構図にできたのは、すごく大きかったなという感触がありました。
あとは活動をやっていく中で、スタートから一週間で30%くらい支援を集めることが目標達成の目安です、という情報をいただいていたのですが、その数字をクリアできず、「これはちょっと厳しいのかな」と思っていました。ただ最後、最終日で一気にグイっといってくれたので、そこは皆様の応援がありがたかったというのと、僕たちが普段ファンの方とか応援してくれる方との接点を大切にしてきたので、そういうところがつながったのかな、という実感が得られました。
スポチュニティ:最終日の盛り上がりには私たちもとても驚きました。
小池:クラウドファンディング中も試合は続いていて、本当はもっと発信したいけど試合に負けちゃうと発信しづらいというか、チームの勝敗に左右されてしまうというか。発信してもいいのかもしれないが、どう思われるかというのが不透明だったのであまりツイートしなかったり、常に満足いく発信ができなかった。個人的にはそういう機会にゴールも取れていたので、ゴールしたらインスタのDMで「ナイスゴール」という形で支援してくれた方もいたので、そういうのは本当に良かったと思います。
≪プロジェクトを振り返ってみて≫
スポチュニティ:プロジェクトの企画段階、プロジェクトが始まってからのプロモーション段階、そして終わってからの3つの段階を振り返ってください。企画段階ではアピール文をつくったり、コラムを掲載したり、リターンを決めたりがあったと思いますが、どんな感じで連携しましたか?
沼澤:もともとグッズを自分たちで企画して販売していたので、その中でブレストしながらリターン品を挙げていって、定例MTGの中で私達がピックアップしたものをSpportunityのみなさまにご相談してその中から行けそうなものを選んで、という感じで、そんなにリターンの商品を考えるのは大変ではなかったよね?
小池:沼澤さんがすごく常に前に立っていろいろやってくれていた。日頃からこんなのを作りたいとかイメージしている部分はあったので、そこに対して抵抗感とか難しく考えてしまう思考みたいなものはなかったです。
スポチュニティ:トウモロコシがリターンになるって他にはない、とてもユニークなものだと思いました。
沼澤:スポーツ関係だとなかなかないと思います。本来のクラウドファンディングで考えると、逆にそれが普通かなと思う。「お金を支援していただいて、目指すものを作って、できたものを返す」というのは。割と普通だと思うが、スポーツ関係だとかえってそれがないのかな、と。
スポチュニティ:他のSpportunityのプロジェクトでは見慣れないものがあったが、言われれば成果物が返礼品として戻ってくるというのは、プロジェクトとしては自然な形ですね。
沼澤:あとは、選手だからこそというのもいくつか考えました。自分の中で考えて小池・梶川にも話していないものもいっぱいあったんですよね。チーム関係とかシーズン中のタイミングでできないもの、面白いけどできないアイディアが多かった気がします。