利用者の"生の声" 〜一般社団法人F-connect(後編)〜

F-connectは、2014年に小池純輝選手が当時在籍していたクラブのスタッフからお願いされて顔を出した児童養護施設での幼い子供たちとの交流をきっかけに、サッカー・フットボールを通じて何か子ども達に伝えることは出来ないかと考え、【フットボールで繋げる、フットボールが繋げる】をコンセプトにF-connect(フットボールコネクトの略)と名前を付けて2015年に活動を始めた団体です。

F-connectは、2021年に「エフコネファーム」という活動を始めることになりました。これは、「プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子ども達と泥んこになりたい』をテーマに長野県飯綱町の畑に施設の子供たちを招待して、自然の中で学ぶ体験を提供する、という活動です。
今回、「エフコネファーム」を実行するための活動資金を集めるため、スポチュニティでクラウドファンディングを実施。プロジェクトは目標金額の300万円を達成して大成功に終わった。
クラウドファンディング実施に至った経緯、思ったことなど、F-connectの生の声を2回にわたって配信します。

≪プロジェクトを振り返ってみて ~続き~≫

スポチュニティ:さきほど、プロジェクトを行った結果として、地域も含めて幅広い方々にF-connectの活動を知っていただくきっかけになったとおっしゃっていました。Spportunityで書かせていただいたコラムは、F-connectの活動をより解像度高く知ってもらうという目的があると思いますが、いかがでしたか?

沼澤:近い内容と言っては失礼だが、そういったものをスポーツメディアに取り上げてもらったり、自分達でブログ発信とかはしているんです。ただそれはもともとF-connectを追いかけてくれている方の目にしか止まらないことが多く、今回、Spportunityのコラムが出た後、「Yahooトピックスを見ましたよ」とか、そういうツイートに対してのリツイートなど反応がよかった。

先程話したようにF-connectをはじめて知った方々に、エフコネファームじゃなくて、F-connectの成り立ちを知ってもらう機会になったので、あのタイミングでのコラム発信はすごく助かりました。

多分、通常のクラウドファンディングではこうやって深いところまで発信してくれるものはないと思うので。例えば何かを作りたいとなると、それがどんなものなのかだけを必死にアピールするクラウドファンディングが多くて、その会社がそれをつくるためにどういう歴史を歩んできたのかというのは、他のクラウドファンディングではあまり紹介してくれないと思います。そういう意味では、やっていることはエフコネファームですけど、コラムで宣伝できたのはF-connectかなと思います。

スポチュニティ:タイミングも大事ですよね、こういった情報発信をする時には。

沼澤:あとは対談形式でやっていただいたので、現地でお手伝いいただいているIDDWORKSさんなど、関わってくれている方たちにも喜んでいただけたのはよかったかなと思います。

・プロジェクトが実際に始まってから、先ほど伺った話だと初動が思ったほど伸びなかったというところで不安になられたということでした。SNSの拡散とか、プロモーション周りで何か感じられたことはありますか?

沼澤:理想通りのスタートは切れませんでした。正直、4月頃ってチーム成績が振るわないメンバーも多かったりしたので、なかなか自分たちが思い描いたようなスタートは切れなかった。

今までは全員で何か一つのことをちゃんとリリースするということをしてこなかったのですが、エフコネファームのTwitterを上げてから、みんながちゃんとフォローしてくれた時にインプレッションが10万を超えた。あの時はメンバーが8人だったんですけど、自分達の情報が目に行き届く人たちがこれだけいるのであれば、もっとやり方をうまく工夫していけば大きな情報発信ができるんじゃないかな、と感じました。

それがさっき話したように小池が着ているようなウェアのスポンサー営業につながる武器になったりとか、そこに関しては見直しができました。

スポチュニティ:色々発信された結果の分析などを、今後のアクションに利用されるとか、その辺りの活動はされているのでしょうか?

沼澤:まだ正確には数字など把握できていませんが、この一年は選手が直接子供たちに会いに行くっていうのを大事にしてきましたが、コロナ禍の中でそれが全くできていない。ワクチン接種が進んで状況が落ち着いた頃、秋以降に施設に行けるようになった時にまたうまく情報発信して、新しくつながった方々に本来やっている活動をきちんと見せていくのをおこなっていきたいと思っています。

スポチュニティ:プロジェクトを終えられて、今回目標金額を達成されていますが、結果については満足されていますか?

沼澤:本当に達成できてよかった。試算が甘かったりして、200万だったら正直赤字だったかもしれないので・・・。

やりたいことに対して、今回はどうにか予算内に収まりそうなので、本当に目標達成できてよかったなというのと、あとは動き始めてから、明確にかかる費用が分かった部分もたくさんあるので、来年以降の課題も同時に明確になったかなと思っています。(沼澤)

スポチュニティ:一連のクラウドファンディングのプロジェクト、初めから終わりまで通しでやられて、全体的なことを振り返った時に、Spportunityにもう少しこうしてほしかったとか、何かご要望とかはございますか?

沼澤:いや、特に楽しくできた3ヶ月間ではあったかなと思います。だいぶ助けていただいたな、というのはあった。

≪今後の目標について≫

スポチュニティ:今、F-connectさんでは、短期的・中長期的にどんな目標をお持ちですか?

小池:これまでベースの活動としては施設訪問をして、子ども達と触れ合い、僕らを身近に感じてもらって、その身近に感じた選手をスタジアムで見られるようにチケットをお渡して招待していました。身近に感じた選手が一生懸命やっている姿とか、ピッチで頑張っている姿を見てもらった時に、僕も頑張ってみようとか、私も目標を持ってみようとか、そういう夢や目標を持つきっかけづくりというのをずっとテーマにやってきた。

施設の現状として、施設には18歳までしかいられなくて、その後退所しなくちゃいけないので、その後の自立がすごく大変というのは現場の方にお伺いしています。進学するのも大変だし、就職してもなかなかうまくいかなかったりとか、壁にぶち当たるとやめてしまったりとか、そういう子が多い。おそらく18歳まで共同生活をしているので、そういう先輩たちを見ると余計夢とか目標とかを持ちづらい環境なのかな、というのがある。まずは当初からやっている夢とか目標を持つきっかけづくり、気持ちの部分にアプローチしていければいいな、というのが一つあります。

エフコネファームも生きる力を学んだり、自然の力とかそういうのを体験しながら学んでもらいたい、そういう場を作りたいっていうことを目指して立ち上げました。この畑の運営も2~3年やっていって大きくできたら人手も必要になりますし、そうなった時に収穫のイベントに来てくれた施設の子が例えば農業に興味を持ってくれて、18歳の進路を問われる時の選択肢の一つにエフコネファームが入ってくるみたいに、就職支援とかもできると良い。今後そういうところも見据えて活動していきたいと思っています。

スポチュニティ:それを踏まえた時に、今のF-connectさんの現状を考えると難しさや課題は何かあったりしますか?

小池:運営していくにあたってお金が必要になってくるので、応援して下さる方を増やすことが必要だなっていうのはある。まあお金があるとできることも増えますし。本当に最初梶川と2人で始めて、ボランティアというか、最初はお金をもらっちゃいけないじゃないですけど、そういう気持ちでやっていましたが、活動を継続して続けて子供たちに何かをしたいってなるとどうしてもお金は必要になってくるので。
そういうフェーズといいますか、お金をしっかり集めて応援してもらえるようにするっていうのが今一番の課題かなと思っています。あとはメンバーがOBも含めて11名いますが、他の選手たちも立ち上げた僕らと同じように熱量を持ってもらえるように活動してもらうということも一つのテーマだと思っています。外側の応援してくれる人たちへのアプローチと、僕らの内側のF-connectの中でのアプローチと、一番大事なのは施設へのアプローチと、その3つをやっていかないと、と思っています。(小池)

スポチュニティ:クラウドファンディングを通じて金銭的なこと以外で得られたものについて、少し教えてください。

沼澤:先ほどお話したように、既存のファン・サポーターの方だけでなく新しい方へも広まったということはすごく大事な財産です。皆さんにお金をいただいて新しいことを始めるという部分で、注目度も高まりますし、今までだと自分達でできる範囲のことを自分達でやってきたので、大抵の失敗は許されたんですよ、自分達の活動なので。

ただ今回はみなさんにご支援いただいたお金というのがあるので、やはり責任という部分は今までとは違うものがまた一つ芽生えたかなと思います。自分たちだけが満足する活動ではなく、ご支援いただいている方にも認めてもらえる活動を続けていかないといけないと思っています。

スポチュニティ:今回支援された方との継続的なコミュニケーションは想定されていますか?

沼澤:新しく応援くださる方に関しては、情報発信を増やしていって関係性を切らず、少しずつ歩み寄っていくっていうのが一番かなと思います。もともとF-connectには賛助会員としてF-connectを応援して下さる方が55人いらっしゃって、やはりその人たちからのクラウドファンディングの支援はものすごく大きかった。

クラウドファンディングをきっかけにエフコネファームやF-connectを知って、賛助会員になってくれた方もいるんですよ。賛助会員もクラウドファンディング中に増えました。

F-connectを新しく知って下さった方の中には、まだ賛助会員の仕組みを知らない人もいると思うので、そういう方には今年のF-connectの活動をしっかりお伝えして、来年は賛助会員になっていただけるような、満足感を得てもらう活動にしていきたいというのと、2年目・3年目の賛助会員の更新をしていただけるように、頑張って関係を続けていけたらな、と思っています。

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