利用者の"生の声" 〜プロサッカー選手・黒川淳史、異色の挑戦!農業ブランド「PITCH to PLATE」で描く新たな未来(前編)〜

「PITCH to PLATE」は、現役プロサッカー選手・黒川淳史選手が立ち上げた食と農業とアスリートをつなげるブランドです。そして、競技人生の延長線上に、地域への恩返しと、次世代につながる食のあり方を描くプロジェクトです。

日本各地のホームタウンでは、少子高齢化や担い手不足により農業が岐路に立たされています。そんななかで、アスリートが持つ体力・精神力・チームワークの力を活かし、地域のフィールドに新しい風を吹き込むことはできないか?このプロジェクトは、そうした問いから生まれました。

「農業=引退後の選択肢」ではなく、「現役中から挑戦できるもう一つのキャリア」 として農業に関わる道を拓きたい。 そして、地域と共に食の未来を耕し、多様な人材が流れ込む農業の新しいモデルを育てていきたい。

サッカーのピッチから農業のフィールドへ、そしてお世話になった町からみんなの食卓へ。黒川選手は新しいチャレンジの第一歩として、クラウドファンディングに挑戦しました。その想いを黒川選手にお聞きしました。

プロサッカー選手から農業という新たなフィールドへ:異色の挑戦の始まり

スポチュニティ: 黒川選手、本日はお忙しい中ありがとうございます。プロサッカー選手として活躍されている中で、なぜ「PITCH to PLATE」という農業ブランドを立ち上げようと思われたのか、そのきっかけからお聞かせいただけますでしょうか?

黒川淳史選手(以下、黒川): こちらこそ、ありがとうございます。僕が農業に興味を持ったのは、プロサッカー選手としてキャリアを通じて、「食」の重要性を強く感じたことが大きなきっかけです。海外でのプレー経験も豊富なんですが、ブルガリアやラトビアといった国々での生活で、日本の食材がいかに高品質で素晴らしいか、そして海外での評価が高いかを肌で感じました。

スポチュニティ: 具体的にどのような体験が、その想いを強くしたのでしょうか?

黒川: 例えば、海外のスーパーに行くと、日本の醤油が特別なコーナーに置かれていたり、寿司はどの国に行っても「ジャパニーズフード」として高級なイメージがあるんです。それは単なる味だけでなく、品質への信頼感食の安全性に対する評価だと感じました。プロとして最高のパフォーマンスを出すためには、何を食べるかが非常に重要だと痛感しています。体を作る資本は間違いなく「食」です。そんな中で、日本の農業が抱える後継者不足や耕作放棄地の問題を知り、この素晴らしい日本の「食」を守り、さらに発展させるために、自分に何かできないかと考えるようになりました。

スポチュニティ: それが「PITCH to PLATE」というブランド名にも込められているのでしょうか?

黒川: まさにその通りです。「PITCH to PLATE」は、サッカーの「ピッチ」から食卓の「プレート」まで、つまり自分たちの手で育てた安全で質の高い農産物が、そのまま人々の食卓に届く、というコンセプトを表現しています。アスリートとして培った「質へのこだわり」を農業にも活かし、安心安全で美味しいものを届けたいという想いが込められています。僕自身、これまでサッカーで結果を出すために、食事には人一倍気を遣ってきました。その経験から、食材の持つ力を深く理解しています。旬のものを旬の時期に、新鮮な状態で食べる。これが身体にどれほど良い影響を与えるか、身をもって体験してきました。このアスリートとしての視点と経験を、日本の農業に還元したいと強く願っています。

スポチュニティ: 第1弾プロジェクトにご自身の地元である嵐山町ゆかりのリターン品を選ばれたのは、何か特別な理由がありますか?

黒川: 嵐山町は僕の地元であり、豊かな農産物に恵まれた場所です。しかし、やはり高齢化や後継者不足といった問題は無視できません。地元への貢献という意味合いも強く、地域に根差した形で農業を活性化させたいという想いがありました。今回のクラウドファンディングでご支援いただいた資金の一部を、嵐山町の農家さんがサツマイモを保管する保管庫の試作費に充てることになったのも、具体的な地域貢献の一環です。僕のルーツであるこの地から、日本の農業の新しい形を発信していきたいという強い気持ちがあります。

クラウドファンディング成功の裏側:資金調達だけではない「仲間集め」の戦略

スポチュニティ: 今回、「PITCH to PLATE」の立ち上げにあたり、なぜクラウドファンディングという手法を選ばれたのでしょうか?

黒川: 資金集めはもちろん大きな目的でしたが、それ以上に重要視していたのが、事業の全国的な「広報」と「認知拡大」です。ただ資金を集めるだけでなく、僕の事業を広く知ってもらい、共感してくれる人たちを増やしたかった。スポチュニティさんでのコラム記事やSNSでの拡散を通じて、より多くの人にリーチできると考え、挑戦しました。クラウドファンディングは単なる資金調達のツールではなく、僕の想いを伝えるためのプラットフォームとして捉えていました。

スポチュニティ: 数あるクラウドファンディングサービスの中から、スポチュニティを選ばれた理由は何でしょうか?

黒川: 共通の知人の紹介でスポチュニティさんと出会いました。アスリート支援に特化しているという点が、僕にとっては大きな安心材料でしたね。僕自身、アスリートとして、競技を続ける上での経済的な課題や、セカンドキャリアに対する不安を肌で感じてきました。そんなアスリートの悩みに寄り添い、サポートしてくれるスポチュニティさんの姿勢に、心から信頼を寄せることができました。

スポチュニティ: クラウドファンディングを始める前、何か不安に感じていたことはありましたか?

黒川: 広報活動は得意ではないので、正直なところ、どれくらいの支援が集まるのかは不安でした。目標金額設定はしましたが、本当に達成できるのか、というプレッシャーはありましたね。ただ、それ以上に「強力な助っ人がいるから大丈夫だろう」という根拠のない安心感もありました。その「強力な助っ人」というのは、スポチュニティさんのことです。アスリートに特化している分、アスリートの想いを理解し、的確なサポートをしてくれるだろうという期待がありました。実際に、プロジェクトページ作成からリターンの設定、広報戦略に至るまで、手厚いサポートをいただき、非常に心強かったです。

スポチュニティ: プロジェクト準備期間が長くなりましたが、スポチュニティのサポートはいかがでしたか?

黒川: 僕が日本にいるのか海外に行くのかでスタート時期が定まらない状況だったのですが、臨機応変に対応いただけたのは非常にありがたかったです。もしそのまま強行突破していたら、収拾がつかなくなっていたかもしれません。悪い点は特になく、むしろ皆さんが僕のプロジェクトにかなり期待してくれているんだなと感じました。僕のスケジュールに合わせて、綿密に調整してくださったことで、安心してプロジェクトを進めることができました。

スポチュニティ: 海外への移動やサッカー選手としての活動を続けながらのビジネスへの挑戦、そしてクラウドファンディングの準備は大変だったと思いますが、両立で苦労した点はありましたか?

黒川: 最初のスタート日の設定が何度も変更になったのは難しかったです。海外リーグのシーズン中かオフの時期など、僕のスケジュールは流動的で、なかなか確定できない部分がありました。あとはリターン品の準備も、僕が海外にいるのか、ちょうどオフシーズンで日本にいるのかで調整が必要でした。結果的にプロジェクト実施中は日本にいたので大丈夫でしたが、もし海外にいたらリターン品の準備をどうするか、誰が発送するかなどを細かく決める必要がありました。自分が関わるものだと、早めに用意しておく必要があるので、そこは少し難しい点でした。海外に拠点があると、物理的な制約がどうしても出てくるので、スポチュニティさんと密に連絡を取り、色々と相談しながら進める必要がありましたね。この経験を通じて、改めて計画性の大切さと、周囲の協力のありがたさを痛感しました。

スポチュニティ: 目標金額を見事達成されました。支援金を募るために努力したことや工夫したこと、特に効果があったと感じることはありますか?

黒川: 経営者の方々と会う機会が多く、その方々が僕のプロジェクトをSNSで拡散してくれたり、直接応援してくれたりしたのが大きかったと思います。そして、アスリートの仲間もすごく応援してくれましたね。Jリーグの選手や、以前一緒にプレーした海外の選手たちも、僕のSNS投稿を見て「頑張ってね」「応援してるよ」とメッセージをくれたり、シェアしてくれたりしました。SNSでの呼びかけももちろん行いましたが、やはり直接的な人との繋がりが、一番効果的だったと感じています。僕の想いを直接伝え、それに共感してくれた人たちが、さらにその輪を広げてくれるという良いサイクルが生まれました。これは、サッカーを通じて築いてきた「信頼」の積み重ねが、形となって現れたものだと感じています。

スポチュニティ: 周囲からの温かい応援を受けての目標達成ですね。今回のクラウドファンディングの結果について、今感じていることはありますか?

黒川: 目標金額を達成できたことには非常に満足しています。達成の瞬間は、本当に感動しましたし、これだけ多くの人が僕の挑戦を応援してくれているんだと、大きな勇気をもらいました。ただ、この資金をどのように大切に使うか、しっかりと資金計画を立てて、事業を進めていかなければならないと強く感じています。決定事項もありますし、現在準備段階のところもありますが、ご支援いただいた皆様の期待に応えられるよう、大切に使わせていただきたいと思っています。不満に思う点はなく、順調に進んでいると感じています。これは、僕一人で成し遂げたことではなく、多くの「仲間」の協力があってこそだと実感しています。

スポチュニティ: 集まった資金の具体的な使い道は決まっているのでしょうか?

黒川: はい。初期活動資金として商標登録や「PITCH to PLATE」のデザインに利用するほか、最近決定したことですが、僕の地元の嵐山町の農家さんがサツマイモを保管するための保管庫の試作費に、プロジェクトで集まった金額の一部を充てることになりました。これは、具体的な地域貢献にも繋がると考えています。地域と共に成長していくという「PITCH to PLATE」のコンセプトを体現する形です。

スポチュニティ: 「仲間集め」もテーマに掲げられていたと思います。手応えや効果はいかがでしたか?

黒川: クラウドファンディングのページだけでなく、コラム記事も多くの方に読んでいただけたようで、それが大きかったですね。普段接点のないような選手から「黒川選手、農業始めたんですね」と声をかけられたり、農業について質問してくる選手もいました。その選手も一緒にやってくれるんじゃないかと期待しています。サッカー選手は現役時代はもちろん、引退後もセカンドキャリアをどう築くかという課題に直面します。農業は、そうしたアスリートのセカンドキャリアの一つとしても、大きな可能性を秘めていると感じています。

黒川: さらに、女子サッカーチームの水戸シルエラさんが「PITCH to PLATE」への参加を決めてくれたので、その意味でも仲間集めは非常に効果があったと感じています。予想以上の反響があり、農業について考えているアスリートが多いんだなと驚きました。食事とスポーツは密接に繋がっていると改めて感じましたね。アスリートが自身の身体を管理するために「食」への意識が高いのは当然です。その意識が、食の生産者である農業への関心に繋がるのは自然な流れだと感じています。

スポチュニティ: コラム記事は仲間集めにも大きな力を発揮したのですね。

黒川: ええ、その通りです。クラウドファンディングのページだけでは語りきれない僕の深い想いや背景をコラム記事で掘り下げていただけたので、そこに共感してくださる方が多かったのだと思います。僕の情熱が、文章を通じて伝わったのだと感じています。言葉の力、そしてストーリーの重要性を改めて認識しました。

スポチュニティ: 今回の第1弾をきっかけに、他の仲間もどんどん増えていくといいですね。

黒川: そうですね。この「PITCH to PLATE」は、僕が第1弾としてクラウドファンディングに挑戦しましたが、第2弾、第3弾と、賛同してくれた人々がスポチュニティさんを利用してやっていくイメージがあります。ぜひこれからも引き続きスポチュニティさんのお力を借りて、「PITCH to PLATE」を大きくしていけたらと考えています。アスリートが農業に関わることで、地域活性化や食育といった社会貢献にも繋がる、新たな価値を生み出せると信じています。アスリートの繋がりは非常に大きいと思います。スポチュニティさんのアンバサダーの方もたくさんいらっしゃいますし、アスリートの方々が発信してくれると、一気に広がるというか、一人ひとりにファンがついて、色々なSNSで拡散されるので、そこはすごい強みだと思います。ぜひ活用していきたいですね。僕自身もアンバサダーとして、積極的に貢献していきたいと思っています。アスリートのネットワークは、想像以上に強力な力を秘めていると実感しています。